うつ病とは
誰しも、毎日の暮らしや社会生活の中で、悲しい気持ちになったり、落ち込んだり、どうしてもやる気が出なかったりと、憂うつな状態になることがありますが、だからといってそれがすぐに「うつ病」というわけではありません。
どうして「うつ病」が起こるのかはまだ十分には解明されていませんが、「うつ病」は脳の働きになんらかの問題が起きて発症する病気なのです。憂うつな状態にあるとき、それが「うつ病」なのか、そうでないのかを区別するのはとても難しい問題です。しかし、日常生活や社会接活に支障をきたしたり、体が不調になったり、万が一「死にたい」などと思い浮かぶようになったら、遠慮なく、早めにご受診ください。それが「うつ病」であってもなくてもしっかりとお話をし、心の状態を改善する方策を一緒に考えていきます。
どのような症状があるとき、「うつ病」が疑われるのか
- 気分が落ち込む、気が滅入る、もの悲しい、などの「抑うつ気分」になる
- 趣味など、今まで楽しんできたことに対する興味や楽しさが感じられなくなる
- 食欲がなく、体重が減ってきたり、逆に食べ過ぎてしまい、体重が増えたりする
- 眠ってもすぐに目が覚める、熟睡できない、あるいは寝すぎてしまう
- 何をするにしてもやる気が出ず、また動作が緩慢になったり、落ち着きがなくなったりする
- 自分には価値がないと思い込んだり、自分のせいで他の人に迷惑がかかっていると思ったりする
- イライラして集中力がなくなり、物事について考えたり決断したりできなくなる
- 無口になり、人に会いたくなくなる
- 頭痛や肩こりがひどくなる
- 死にたいと思ったり、自殺について考えるようになったりする
いろいろと上げてきましたが、「うつ病」の症状は人により非常に様々で、中には心の状態に大きな変化はないものの、身体的な不調が強まってくるタイプの「うつ病」もあります。当クリニックでは患者さま一人一人と向き合い、その人の心や体の状態がどのようになっているのか、丁寧にみていきます。
「うつ病」の原因とは、どんなものが考えられるのでしょうか
(発症するきっかけとなるものがいくつかあります)
- 家族との死別など、とてもつらい出来事があった
- 家庭内や仕事、職場環境で強くストレスを感じることがあった
- 転職や引っ越しなどで、大きく周辺環境が変わった
- 定年退職や目標達成など、肩の荷を下ろすような出来事があった
きっかけに関しても非常に様々ですが、こうした強いストレスなどから脳内に様々な変化が引き起こされ、「うつ病」を発症すると考えられています。
一つには脳の神経伝達細胞の中のセロトニンやドパミンといった神経伝達物質の機能低下による可能性が考えられています。簡単に言うと、セロトニンは心を落ち着かせる物質、ドパミンは活動性を高める物質です。そのバランスが崩れ、うまく働かないことで、心のコントロールがうまくいかなくなっているのです。
また、ストレスを受けると、そのストレスに対処するためにグルココルチコイド(コルチゾール)というホルモンが分泌されるのですが、これが長期にわたり発散され続けると脳の海馬や前頭葉において神経細胞が障害され、「うつ病」を引き起こすということも考えられています。他にも体の中で何らかの軽い炎症が続いていること、甲状腺の病気や更年期障害によるホルモンバランスの崩れ、薬の副作用などが原因として考えられています。
「うつ病」の症状を改善するために
第一には、十分な「休養」を取ることです。働いている場合は、可能であれば休職するようにし、家庭にいる場合は、ひとりでゆっくり過ごせる時間を持てるようにします。病気であるということを周囲に理解してもらうことも必要になってきます。
第二には、ストレスの原因となっていることがわかっている場合は、そのストレスを軽減できるよう、環境を変えることです。これを「環境調整」といいます。職場での配置転換や、生活環境の変更など、難しいかもしれませんが、できるだけ考えていきます。
第三には「薬」による治療です。心を司る脳は体です。体の病気に薬は有効です。一人一人の症状に合わせ、適切な薬を、適切に使用していけば、「うつ病」の症状の改善を図ることができ、そこから通常の日常生活へと戻っていくことで、回復することが期待できます。
※「うつ病」治療の薬には、以下のようなものがあります。
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
- セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
- ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)
- 三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬 など
この他、医師や臨床心理士と会話をしていく中で、自己否定感などマイナスの方向に向かいがちな心の問題を見つめ、対処の方策を探っていく「認知行動療法」などもあります。当クリニックでは、患者さまの状態・状況に合わせ、総合的に有効な治療を行っていきます。ひとりで悩んでいると、「うつ病」はそのまま、自分の中に居続けることになります。まずは一歩、踏み出してみることが大切です。