社会不安障害とは
会社のプレゼンや学校での発表など、何か人前に出なければならない時、人は緊張するのが当たり前です。しかし、その緊張が極度に高まって、人前に出られなくなる、あるいは出なければならないという時に動悸や発汗、吐き気、めまいなど身体的症状も発症してしまう場合は、社会不安障害であるかもしれません。
社会不安障害の症状について
- 対人恐怖症
- 他人が自分をどう思っているか、他人の評価が過剰に気になり、他人と接したり話をしたりするときに、恐怖や震え、めまいなど感じてしまう。
- 赤面恐怖症
- 人前に出ると緊張して顔が赤くなりますが、それを強く不安に思い、隠したいと思うことでさらに顔が赤くなり、苦痛が強くなって、日と接するのを避けるようになってしまう。
- 発汗恐怖症
- 緊張する場面では発汗がひどく、ハンカチを持たないと落ち着かない、また発汗することを恥ずかしく思い、人前に出られなくなってしまう。
- 場面恐怖症(場面緘黙症)
- 学校や職場などで人前に出ると、緊張し声が震える、あるいはうまく言葉が出なくなってしまう
- 書痙
- 結婚式の受付などで名前を書くなど、人前で字を書こうとすると緊張や不安を感じて、手が震えてしまう
この他にも、オフィスで電話を掛けようとすると、周りの視線が気になったり、こわくなったりする「電話恐怖症」と呼ばれる症状など、様々な場面において社会不安障害は発症する場合があります。これら、ほとんどの状況で不安や恐怖を感じる全般型と、限られたシチュエーションで感じる限局型があり、全般型は発症年齢が低く、重症である場合が多いと言われています。
緊張したり、顔が赤くなったり、発汗したりということは、一般の人でもよくあることです。ではどのような基準で、社会不安症と診断するのでしょうか。
問診の際、以下のことをお伺いし、すべてに該当した場合、社会不安症加害の可能性があると診断します。
- 人から見られたり、注目を浴びたりすることに不安や恐怖を感じる
- その不安や恐怖は、自分でも過剰であり不合理だと思う
- その状況に対し、避けたり我慢したりしなければならないほどの恐怖を感じる
- その恐怖により著しい苦痛を感じ、日常生活に支障をきたしている
思春期に多かった社会不安障害ですが、
30~40代で発症することも多くなりました
以前は人前に出るのが苦手な性質の子供が、思春期になって発症することが多いとされていましたが、現在では社会で中核となる30~40代の大人にも見られるようになりました。会社でのプレゼンをするときに、突然発症したりすることもあります。原因ははっきりしていませんが、あくまで病気ですので、頑張って何とかしようとすると、悪化する可能性もありますので早めにご受診いただくのがよいでしょう。
近年では社会不安障害を抱える人が人前で話すときに、大脳の偏桃体と海馬の働きが高まるということがわかってきました。こうしたことから、セロトニンなどの脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、中枢神経系が正常に機能しなくなって、社会不安障害が発症すると考えられています。
薬物療法と認知行動療法
社会不安障害の原因はよくわかっていませんが、特定の薬が有効であることはわかっています。その薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など)を用いつつ、今、感じている恐怖や不安が、自分の思い込みに過ぎないことを、認知行動療法を通じて学んでいき、少しずつ、人前でできることを増やしていき、日常生活に支障をきたさないようにしていきます。性格の問題だと悩まれている方もいらっしゃるかもしれませんが、それが病気である場合もあるのです。病気であれば治療によって、治していくことが可能です。