双極性障害とは
気持ちがひどく落ち込む抑うつ状態。それとは逆に、気分が爽快で早朝から深夜まで元気に活動でき、なんにでも積極的になる。そんな状態を躁状態と言います。この抑うつ状態と躁状態を繰り返すのが双極性障害で「躁うつ病」とも言われます。
躁状態は日常生活や社会生活に大きな問題を引き起こすことも
- ほとんど寝ずに動き回り、家族や周囲の人にしゃべり続け、迷惑を考えない
- 仕事や勉強には精力的に取り組むが、ひとつのことに集中できず、目標を達成することができない
- 気が大きくなり、高額な買い物をして多額の借金を作ってしまう
- 失敗の可能性が高いことに手を出し、社会的信用を失ったり、仕事を辞めなければならなくなる
- 自分に特別な能力があるといった誇大妄想になる
など
上記のような躁状態に加え、社会生活に著しい影響が少ない「軽躁状態」が見られる場合もあります。
また、抑うつ状態ではうつ病と同様の症状が見られます。
うつ病のページ
「抑うつ状態」と「躁状態」が繰り返される場合を「双極Ⅰ型障害」、「抑うつ状態」と「軽躁状態」が繰り返される場合を「双極Ⅱ型障害」といいます。「抑うつ状態」の時は、うつ病とよく似た症状のため、うつ病と思って受診される方もいますが、うつ病と双極性障害は違う病気ですので、注意が必要です。
診断の基準は過去における躁状態や軽躁状態の有無なのですが、患者さま自身で気づいていない場合もあり、慎重に問診を行っていく必要があります。
双極性障害では、最初に抑うつ状態、あるいは躁状態を発症してから次の状態が現れるまで、5年くらいの間隔がある場合があります。症状と症状の間は健康な状態です。この間に治療をしていないと、症状が繰り返され、しかもだんだん間隔が短くなっていき、最終的には急速交代型と呼ばれる状態となってしまいます。こうなると薬も効きにくく、また周りへの影響も大きくなってしまいます。
双極性障害を発症する原因について
「うつ病」と比較して、脳の機能や遺伝的要因が大きいと言われています。それに加え、性格や肉体的、精神的ストレスが誘因となると考えられていますが、その確かなことはわかっていません。20歳代~30歳代の発症が多い、家族に精神疾患の人がいるなどの特徴があるとされていますが、どんな方にも発症の可能性はあります。症状が進むと社会生活や家族関係が破綻する場合もありますので、早期に治療を開始することが望まれます。
双極性障害は治療を続け、長く付き合っていく事も
基本的には薬による治療が中心となります。使用する薬は気分安定薬と呼ばれるもので、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンなどがあります。このうち中心に使用されるのがリチウムです。気分が大きく上下する状態をコントロールし、抑うつ状態、躁状態の両方に効果があります。抑うつ状態が深刻な時の自殺の予防にもつながります。ただし、リチウムには副作用もあるため、使用時には血中濃度を測って効果と作用を確認していく必要があります。
また、双極性障害をうつ病と診断され、抗うつ薬を服用してしまうと、症状が悪化してしまう可能性がありますので、慎重な診断が必要になります。
双極性障害にはほかに、心理療法も並行して行う場合もありますが、双極性障害は長く治療を続けていく必要のある病気です。どう病気と付き合い、投薬などの治療をしていくか、当院では患者さまひとりひとりに合わせお話し合いをし、治療方針を決めていきます。